2014年1月26日

お気に入りの音楽アルバム その2 ライ・クーダー パリス・テキサス 

今回御紹介するのは音楽。

ライ・クーダーの『パリス・テキサス』。Paris Texas by Ry Cooder

これは前回この映画に関する投稿をしました。

今回はそのサウンドトラックのアルバムについて。

ライ・クーダーとは誰?

彼は世界でも有数のスライド・ギターの奏者。

確かこのライ・クーダー、大昔にサントリーか何かのウイスキーの宣伝に出てました。その時もBGMは彼のスライドギターだった気がします。

ありました、調べたら。しかも二つも。





彼の音楽の凄さ

この音楽には映画を通して出会ったのですが、1曲目が映画のオープニングに使われています。今でも目を閉じてこのアルバムを聴くと、今まで旅した様々な荒野、広大な砂漠が目の前に浮かんできます。

今でも車でどこかに行く時にたまに聞きます。

ニュージーランドは小さな島国ですから広大な地平線の見える風景には縁がありませんが、なぜか、このアルバム=ばかでかい自然の風景+移動と言う公式で、旅情を掻き立ててくれます。

私のこのアルバム内のお気に入り

Paris, Texas
Houston in two seconds
She’s leaving the bank
Dark was the night

また、4曲目のCancion Mixtecaは映画主演のハリー・ディーン・スタントンによって歌われています。スペイン語は少ししか分かりませんが、寂しくて死んじゃいそうみたいな事を歌っています。

また9曲目の I knew these people は映画の中のシーンから来ています。もう何千回と聞いたので、空で復唱出来るくらい。

このシーンは映画の中でも最も重要なシーン。

この曲の内容はそのシーンの抜粋。映画内ではもう少し長くもっと重要な意味を形成する。

I Knew These People

彼(トラヴィス)と息子(ハンター)をおいて突如姿を消してしまったジェーン。

やがてトラヴィスは、テキサスのどっか(確かヒューストン?)の、のぞき部屋で働いてる彼女をなんとか見つけ出します。

で、トラヴィスは客を装ってのぞき部屋に入り、個室でジェーンと再開します。

しかしのぞき部屋ですので、彼には彼女が見えるけど、ジェーンには客が誰だか分からない。

そこで、トラヴィスがジェーンに対して一方的に独白を始めます。

こんな人達を知っていたと言う形で話を始めますが、実はこれはトラヴィスとジェーンの物語。

時間あったので簡単に訳してみました

こんな人達を知っていた
この二人
(咳払い)
お互いに愛し合っていた
女はとっても若く、たぶん17か18
男は大分年上で逞しくてワイルド
彼女はとても美しかった

二人一緒に何でもある種の冒険に変えて行った
彼女はそれが好きだった
単なる雑貨屋に行くのも、冒険に溢れていた
二人はいつもくだらない事で笑ってた
彼は彼女を笑わすのが好きだった
二人共他の事はあまり気にしなかった
何故なら唯一緒にいたかっただけだから
二人はいつも一緒にいた
可能だと感じる以上に彼は彼女を愛していた

彼は昼間仕事に行っている間に彼女から離れているのが我慢出来なくなって来た
だから仕事を辞めた 家で彼女と一緒にいる為に
金が無くなったら別の仕事をし、で、またその仕事もすぐ辞めた

でも暫くして彼女は心配しだした
(女性の声)何について?
多分お金
充分じゃなく、次に何時小切手が手に入るかも分からず
(女性の声)ああ、その気持ち分かるわ

で、内で彼の気持ちが二つに引き裂かれ始めた
(女性の声)どういう意味?
働いて稼いで彼女を助けなきゃいけないと分かってる一方で、彼女から離れているのにも耐えられなかった
(女性の声)なるほどね
離れれば離れる程、彼は気がどんどん狂いそうになった
やがて彼は本当に気が狂い始めた

どんどん色んな事を妄想する様になった
(女性の声)どんな事?
彼女が内緒で他の男と会ってると思い始めた
仕事から帰って来ると、他の男と昼間一日一緒に過ごしてたと彼女を責め立てた
彼女を怒鳴って、トレーラーホームの中の物を壊した
(女性の声)トレーラー...
そう、二人はトレーラーホームに住んでいた

男はひどく酒を飲む様になった
夜遅くまで家に帰らず
彼女が焼きもちを焼くかどうか試した

彼女に焼きもちやいて欲しかったんだけどそうはならなかった
単に彼を心配しただけで、それが彼をさらに怒らせた
彼女が彼の事あまり気にならないから焼きもちを焼かないんだと彼は思った
嫉妬が彼にとっての愛のサインの一つだった

そしてある夜彼女が彼に妊娠していると告げた
妊娠して3、4ヶ月が経っていた
彼は全く知らなかった

突然全てが変わった
彼は酒を飲むのを辞め、まともな仕事を手に入れた
彼女が子供を身ごもっているのだから、彼は愛されているのだと確信した
彼女に尽くして、家庭を築こうと決心した

でも、変な事が起こり始めた
彼も最初は気付かなかった
彼女が変わり始めた
子供が生まれた日、彼女は周りの全ての物に対していらつき始めた
何に対しても気を損ねた
子供さえもが彼女にとっては不当な物に思えた

彼は全てが彼女にとってうまくいく様にと努力した
色んな物買ってあげたり
週に一度ディナーに連れて行ったり
でもいかなる物も彼女を満足させる事は出来ないようだった

2年間、彼は、なんとか出会った最初の頃になる様に、全てを繋ぎ止める努力をした
でも、とうとう彼は何をやってもうまくいかないと言う事を悟った
だからまた酒を飲み始めた

今回は本当にひどくなった
彼が一晩中飲み歩いていても、彼女は心配するでもなく嫉妬もしなかった

彼女はただひどく腹を立てていた
彼女は子供を生ませて自分を囚われの身にしていると彼を責め立てた

彼女は逃げ出す夢を見たと彼に伝えた
ただその事だけを夢見ていた
逃避

真夜中にハイウェイを裸で自分が走っている姿が彼女には見えた
草原を走り抜け
川底を走り抜け
常に走っていた
もう少しで自由になりそうな時に、いつも彼がそこにいた
どうにかして彼女を止める為に
どっからともなく彼は現れ、彼女を止めた

彼にこの夢の事を話した時、彼はそれを信じた
どっかで彼女を捕まえなければ、永遠にいなくなってしまうと言う事を彼は分かっていた

だから彼は彼女の足首にベルを括り付けた
彼女が夜中にベッドから抜け出そうとした時に音で分かる様に
でも彼女もベルに靴下突っ込んで音を消すと言う事を学んだ
ひっそりとベッドから抜け出し、夜の闇の中へ

ある晩、彼女が逃げ出そうとした時、靴下が抜けてベルが鳴ってしまった
彼女がハイウェイを走って行こうとするのを彼はみつけた
彼女を捕まえて、トレーラーホームまで引きづり戻した
暖炉にベルトで彼女を縛って放っておいた

ベッドに戻って横になりながら彼女が泣き叫ぶのを聞いていた
彼の息子が泣き叫ぶのも聞いていた
彼は自分自身に驚いた
何故ならもう何も感じる事が出来なかったから

彼はただ眠りたかった
初めて、どこか遠くにいけたらと思った
見も知らぬどこか遠くの広大な、誰も彼の事を知らない所
どこか言葉や通りが存在しない所
やがて名前も知らないのに、この様な場所を夢見る様になった

目が覚めた時、彼は炎に包まれていた
青い炎でベッドのシーツが燃えていた
炎を抜けてこの世で愛するたった二人の元へ走って行った
でもその二人はそこにいなかった

彼の腕が燃えていた
自分の身を外に投げ出し、濡れた地面を転がり回った

そして彼は走った
後ろの火を振り返る事なく
ただただ走った

太陽が昇って来るまで走り
それ以上走る事は出来なかった
そして太陽が沈んだらまた走り始めた
5日間このようにして走り続けた
全ての人間の痕跡が消え去るまで

最後に

と、まあ、長々と翻訳してしまいましたが、この映画が一人でも多くの方の目に留まるならば価値有りと言う事で。

といわけで、このアルバムも星5つ中5つ、満点と言う事で。



それではまた次回。