さて今回はホリフォードトラックの御紹介。
確かもう3、4年前になると思いますが、NHKの『グレートサミッツ』とか呼ばれる番組で、マウント・アスパイアリングが特集された時に、物語はこのホリフォードトラックから始まったと聞いた覚えがあります。
ちょちょっと検索してみた所、こんなリンクを見つけました。
NHK グレートサミッツ マウント・アスパイアリングの巻
この時知り合いがガイドとして案内兼荷物持ちとして働いていて、その時にちらっと話を聞いた事があります。
残念ながら番組は見た事ありませんが。
また、このホリフォードとは、アイルランドにある地名。19世紀半ばにこの地に始めてやって来た西洋人、P Q Caples パトリック・ケイプルズはアイルランドのホリフォード出身で、自分の生まれ故郷に因んで名付けました。
さて何はともあれ。
ホリフォードトラックはフィヨルドランド北端に位置するホリフォードバレー(谷)のホリフィード川に沿う様に走りニュージーランド南島西海岸のマーティンズ・ベイ(湾)まで抜ける全長55キロのコース。
通常4泊5日で歩き、マーティンズベイに抜けて行くというのが最も一般的な歩き方でしょうか。これについては後ほど詳しく書きたいと思います。
- 特徴と見所
- 山から海へ
- 殆ど平な行程
- マーティンズベイにペンギンとアザラシの群生地がある
1. 山から海へ
これらの写真は、ルートバーントラック上の最高地点であるコニカル・ヒル(1515m)からホリフォードの谷を終点のマーティンズ・ベイまで見下ろしている。幾つか季節と天気の違う時の物を並べてみました。途中にあるのは湖で、マッケロー湖。
これがホリフォード川の終わりのマーティンズベイでタスマン海に水が流れ出ている所。マーティンズベイの砂州が見える。
マッケロー湖の畔から今度は逆にルートバーントラックの方角を見つめる。
ホリフォード川沿いから曇りの日にルートバーントラック方面を見返す。
これはマーティンズベイの海のそばから見返した写真。砂州が真ん中に見える。
出発地点は通常ホリフォード・ロードエンド(道路の終点)と呼ばれる、ミルフォードサウンドに行く途中にある、ホリフォード・ロードへの分岐点を曲がり、更に砂利道を30キロ程行った所にある。
もっと詳しく言えば、ルートバーントラックへの入り口である、The Devide(ディヴァイド=分水嶺、峠)を過ぎ、更に車で5分程でその分岐点に到着。
このディヴァイドが、ニュージーランド南島の南北に連なる南アルプスによって分断された東西を繋げる峠の一つ。南島には4つの峠道があり、その中では一番標高が低く、標高534m。ちなみに他の3つは、北から、ルイスパス、アーサーズパスそしてハーストパスです。
出発地点はダーラン山脈、アイルサ山脈に挟まれた、南極ブナの原生林と数多くのシダに囲まれた場所。それがマーティンズベイまで行くと、そこは南島西海岸で、タスマン海が目の前に。非常に変化に富んだ行程です。
2.殆ど平らな行程
基本的にトラックは大抵平。出発地点からホリフォードの谷を川に沿って歩くので、最高地点のリトル・ホーマー・サドルという場所ですら標高156mとあまり起伏がありません。
ですのでキツさで言えば大分楽な部類に入るトラックです。
しかし逆に言えば、いつも谷底にいるので、山々を見上げてばかりで、標高高い所から景色を見下ろす感動は味わえません。
3.マーティンズベイにペンギンとアザラシの群生地がある
マーティンズベイの小屋から更に海沿いに30分程行くと、ロングリーフと呼ばれる場所に着き、そこがペンギンとアザラシの群生地になっています。
ですのでキツさで言えば大分楽な部類に入るトラックです。
しかし逆に言えば、いつも谷底にいるので、山々を見上げてばかりで、標高高い所から景色を見下ろす感動は味わえません。
3.マーティンズベイにペンギンとアザラシの群生地がある
マーティンズベイの小屋から更に海沿いに30分程行くと、ロングリーフと呼ばれる場所に着き、そこがペンギンとアザラシの群生地になっています。
これがマーティンズベイの小屋の近くにある標識。上から2番目にロング・リーフ・ポイント30分とある
これがマーティンズベイの小屋
ペンギンとはニュージーランド固有のFiordland Crested Penguin、日本語ではキマユペンギンと呼ばれる。
(写真はwww.treknature.comより借用)
こんな感じで、眉毛が黄色で、体長は50−60センチと行った所でしょうか。気を付けたいのは、通常これらのペンギンはこちらの冬にニュージーランドの主にフィヨルドランドにやってきて、子供を産み、夏の訪れとともに南極の方へ冷たい水と餌を求めて移動してしまうという事。
そうは言っても、私がこの2月に訪れた時も一羽、岩の下で呻いて鳴いていたのを聞いたので、何羽か変わり者の移動しないのに運が良ければ会えるかもしれません。
(写真はWikipediaから借用)
一方のアザラシは、New Zealand Fur Sealと呼ばれる種類。こちらは一年中見る事が出来ます。大抵ニュージーランドで見れるこのアザラシは、メスと子供。こういった群生地にやって来て子供を産み、ある程度大きくなるまでここにいて、大人になったら外海へと巣立って行きます。こちらも呻き声が聞こえますので、見逃す事は無いでしょう。
注意したいのはあまり近づきすぎない事。特に子供の危険に敏感な母親のアザラシが結構アグレッシブに威嚇してきますから。
結構臭いがキツくて臭いんで自然とあまり近づきたくなくなると思いますが。
では次に幾つか知っておいた方が良い注意事項について書いてみたいと思います。
ホリフォードトラック歩く際の注意事項
- サンドフライ(ブヨ)
- アクセス及び片道だけ歩く際のオプション
1.サンドフライ(ブヨ)
このサンドフライ、ニュージーランドでアウトドアを楽しむ際にはもう避けようの無いもの。
上にホリフォードトラックは谷底を行くトラックと書きましたが、それはつまりこのサンドフライが一杯いるという事に繋がります。
このサンドフライは、
- 西海岸に多い
- 標高低い所に多い(フィヨルドランドで大抵標高700,800mでほぼいなくなる)
- 淡水の川で産卵して繁殖する
- 日が昇ると共に現れ、陽が暮れると消える
- 雨の日、風の強い日、真夏のとても日差しがキツくて暑い日には数が少なくなります
- 逆に、湿気後多く、風が無い、今にも雨が降ってきそうな時に数が一番多くなります
- 歩いている時は刺されませんが、立ち止まって一分もすれば寄ってきます。歩いてる時に刺される時は歩くスピードが遅いと言う事で、もう少し早く歩かれた方がよろしいかと
ですので、対応策としては、
- なるべく肌の露出した部分を少なくする。この際、特に僻地のサンドフライはよっぽど血に飢えているのか薄いインナーくらいの生地は突き通して刺してきますので、注意を。
- 虫除けを使う。こちらのアウトドアショップ等で幾らでも売ってますんで現地調達すればよろしいかと。なるべく自然成分配合の物を選んだ方がよろしいかと。
- なるべく無駄に立ち止まらず、歩き続ける。小屋内は数は少なくなります。
サンドフライに関してはこちらの先住民族のマオリの人々の間で伝説があります。マオリの神話には日本神話の様に幾つもの神様がいます。
こんな感じのお話。
その昔、身分の上の神様が身分の下の神様に、フィヨルドランドに斧で削って谷、(今のフィヨルド、合計14のフィヨルドが、フィヨルドランド内にある)を作る様命じました。その身分下の神様、フィヨルドランドの南端からせっせと斧を振って谷を作り始めました。
次第と数をこなすうちにその神様の技術も向上して行き、現在のミルフォード・サウンド(14あるフィヨルドの最北端)を手がける頃には完璧になり、現在見れる素晴らしいミルフォード・サウンドのフィヨルドを作りました。
身分上の神様は、この出来映えに甚く満足しました。そこで、その神様、あまりにも美しいこの場所に人間が入って来てめちゃくちゃにされてしまうのを憂慮し、このサンドフライを放し、人間がいつけない様にしました。
てな訳でこんなにも多くのサンドフライがフィヨルドランドにいるというお話でした。
2.アクセス及び片道だけ歩く際のオプション
ホリフォードトラックは一本道で、海でトラックが終わってしまいます。勿論そこには道路も何もありません。ですので歩き終えたは良いがそこからどうすれば良いのか。
そこには幾つかのオプションがあります。
これは筆者がそのジェットボーと運転させてもらった時の物。勿論無免許運転になりますが、まあこの際見逃して下さい。
- もう一回来た道を歩いて引き返す。最も安い方法ですが、これには全部で8日から10日かかってしまいます。それと同じ道を往復で二度繰り返し歩く事になりますのであまりエキサイティングではないですね。ですのでこれは、お金をなるべく使わず、でも時間だけはたっぷりある、同じ道二度歩くのも死ぬ程重いパック背負うのも構わないという人に最良のオプション。
- マーティンズベイからジェットボートを使ってマッケロー湖を引き返し、出発地点までの最後20キロくらいを引き返して歩くと言うオプション。これだとマーティンズベイから同じ日に一日で出発地点まで引き返す事が出来ます。
- マーティンズベイからセスナ機、もしくはヘリコプターを使ってミルフォードサウンド等へ抜け出すオプション。これは時間的余裕が無く、お金使っても構わない人向けのオプション。空から自分が一生懸命4−5日歩いた所を見るというのは結構感慨深い物があります。また、ニュージーランドでは日本に比べて気軽にヘリコプターに乗る事が出来ます。この際日本ではあまり出来ない事をやってみたい人には最良の選択では無いでしょうか。
- 逆に、マーティンズベイまで最初に飛んで行って、そこから逆向きに出発地点の駐車場まで歩いて行くというパターンもあります。
この様に、歩き始める前に、幾つか決断する必要があります。ご自分の都合にあった物をお選び下さい。
それでは、今回はホリフォード・トラックの御紹介でした。
また次回。
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