これについてはこれまでにも多くが語られているとは思いますが、もう一度おさらいの意味を込めてここで解説したいと思います。
先ずは何はともあれ、ビデオを見てみましょう。
この試合は2008年11月に、ウェールズのカーディフで行われた際の物。ウェールズの選手達がハーフウェイライン上に1列に並び、『俺たちはビビリもしないし、一歩も引かないぞ』という意思表明をしています。更には、地元の観衆も選手達をサポートし歓声を上げ、会場が興奮のるつぼと化しています。ちなみにこの時のウェールズの監督はニュージーランド人でした。数多くある試合前のハカの中でも、マニアの間で語り継がれている一つ。
さて、以下に少し解説を試みたいと思います。
1. ハカとは?
ハカとは、ニュージーランド先住民族のマオリの人々の文化の一つで、かけ声に合わせて、足踏みや胸を叩きながら歌を歌いながら踊るダンス。
主に戦の前に自分達の力を誇示する為に、また死人を弔う時、もしくわ何かを祝う時や誰か偉業を成し遂げた人に敬意を払う時に使われます。
ですので決して、ただ単に相手を威嚇する為だけの物ではないという事を覚えておいて下さい。
2. ラグビーとハカ
ラグビーの世界ではすっかりと見慣れたものと化してしまいましたが、元々は、1888年に当時のニュージーランド代表チームが披露したのが始まりの様です。最初に行われたハカには諸説あるようで、ウィキペディアの日本語版と英語版では話が食い違っています。
オールブラックスが試合に挑む際、これはサッカー等でも同じですが、先ず試合に先駆け、選手が入場し、両チームの国歌斉唱が行われます。
そしてそれが終わり、さあ試合が始まるぞという時、ラグビーではたまに出場チームの歴史的背景により、例えばニュージーランドの場合キックオフの前に出場する選手も補欠の選手も併せて選手達がダンスを披露します。
また、ニュージーランドのそれはハカと呼ばれます。同時にこの伝統は太平洋諸島系の国々に根付いていて、ニュージーランドを始め、フィジー、サモア、トンガなどの国々もこういったダンスを試合前に披露します。
3. ハカにまつわる事実
- このハカは、当然相手を威嚇する事を目的としていますが、同時に相手に敬意を表している部分もあります。ですので、ハカが行われている際には直立不動で厳かに受け止めるのが良いとされています。たまにラグビーの国際試合の場で、ハカが行われている時に、観客がブーイングやらチャント等でオールブラックスに対抗しようとしますが、ニュージーランド人にとってはこれは侮辱とまでは言いませんが、ちょっと心が嫌な気分になる時です。
- このオールブラックスのハカ、2つあります。カマテ(Kamate)とカパ・オ・パンゴ(Kapa O Pango)。伝統的に長い間カマテが使われて来たのですが、2005年に初めて、カパ・オ・パンゴが紹介、導入されました。ですので現在では、このうちのどちらか一つが試合前に使われていて、どちらが披露されるかはその時まで毎回分かりません。このカパ・オ・パンゴが導入された初めての試合は今でも覚えています。当時キャプテンだったタナ・ウマガ指揮の元、今まで見た事無いハカが披露され鳥肌が立ったのを覚えています。この新しいハカがこの試合で披露されるというのは、テレビ等を通して噂が流れていて、ニュージーランド中がわくわくしながら待っていました。
- 様々な違ったハカが存在し、部族毎によって違ったハカを持っている。そしてラグビーで言うなら、チーム毎に別のハカがあります。例えば高校生のラグビーチームの試合前に、それぞれの学校の伝統のハカを互いに披露します。下のビデオは、オークランドにある2つの高校が試合前にハカを披露し対峙している物。
- また、ハカには決まった振り付け・ダンスが存在します。やはり一番有名なのは、オールブラックスのカマテですが、このオールブラックスが演じるカマテの振り付けは、このオールブラックスの選手達だけの物で、他の人達がやる事は出来ません。ハカのカマテ自体は、他の人々・グループ(例えばオールブラックス以外のNZを代表するラグビーチーム、Bチーム等)によって演じられますが、その際には振り付け・ダンスはオールブラックスの物とは違います。
- ハカが行われる際には、それを統率し指揮するリーダーが一人必ずいます。かつてはマオリの血を引く物しかオールブラックスではその役割を担う事が出来ませんでしたが、今ではマオリの血を引かない選手、2000年代中盤から後半にかけては当時キャプテンのタナ・ウマガ、彼はサモア系、そして白人(こちらでは西洋人の血を引く人達の事をマオリ語で、パケハ Pakeha)のリッチー・マッコウによって指揮されもしました。ですので、現在では人種を超えたニュージーランド人の誇りを示す物として捉えられています。
と、まあ、ハカについて書いて来ましたが、次回のイングランドでのラグビーのワールドカップまで1年を切りました。これから色々と熱の入った、本気モードの国際試合の数が増えて来るでしょう。今度オールブラックスの試合の際には、是非彼等のハカを見逃さずに。
それではまた次回。