2014年11月5日

オールブラックスの伝統、ハカ

ラグビーのNZ代表チームであるオールブラックスが試合前に行うハカ、皆さんも一度はご覧になった事があるのではないでしょうか?

これについてはこれまでにも多くが語られているとは思いますが、もう一度おさらいの意味を込めてここで解説したいと思います。

先ずは何はともあれ、ビデオを見てみましょう。



この試合は2008年11月に、ウェールズのカーディフで行われた際の物。ウェールズの選手達がハーフウェイライン上に1列に並び、『俺たちはビビリもしないし、一歩も引かないぞ』という意思表明をしています。更には、地元の観衆も選手達をサポートし歓声を上げ、会場が興奮のるつぼと化しています。ちなみにこの時のウェールズの監督はニュージーランド人でした。数多くある試合前のハカの中でも、マニアの間で語り継がれている一つ。

さて、以下に少し解説を試みたいと思います。

1.  ハカとは?

ハカとは、ニュージーランド先住民族のマオリの人々の文化の一つで、かけ声に合わせて、足踏みや胸を叩きながら歌を歌いながら踊るダンス。

主に戦の前に自分達の力を誇示する為に、また死人を弔う時、もしくわ何かを祝う時や誰か偉業を成し遂げた人に敬意を払う時に使われます。

ですので決して、ただ単に相手を威嚇する為だけの物ではないという事を覚えておいて下さい。

2. ラグビーとハカ

ラグビーの世界ではすっかりと見慣れたものと化してしまいましたが、元々は、1888年に当時のニュージーランド代表チームが披露したのが始まりの様です。最初に行われたハカには諸説あるようで、ウィキペディアの日本語版と英語版では話が食い違っています。
オールブラックスが試合に挑む際、これはサッカー等でも同じですが、先ず試合に先駆け、選手が入場し、両チームの国歌斉唱が行われます。

そしてそれが終わり、さあ試合が始まるぞという時、ラグビーではたまに出場チームの歴史的背景により、例えばニュージーランドの場合キックオフの前に出場する選手も補欠の選手も併せて選手達がダンスを披露します。

また、ニュージーランドのそれはハカと呼ばれます。同時にこの伝統は太平洋諸島系の国々に根付いていて、ニュージーランドを始め、フィジー、サモア、トンガなどの国々もこういったダンスを試合前に披露します。

3. ハカにまつわる事実
  • このハカは、当然相手を威嚇する事を目的としていますが、同時に相手に敬意を表している部分もあります。ですので、ハカが行われている際には直立不動で厳かに受け止めるのが良いとされています。たまにラグビーの国際試合の場で、ハカが行われている時に、観客がブーイングやらチャント等でオールブラックスに対抗しようとしますが、ニュージーランド人にとってはこれは侮辱とまでは言いませんが、ちょっと心が嫌な気分になる時です。
  • このオールブラックスのハカ、2つあります。カマテ(Kamate)とカパ・オ・パンゴ(Kapa O Pango)。伝統的に長い間カマテが使われて来たのですが、2005年に初めて、カパ・オ・パンゴが紹介、導入されました。ですので現在では、このうちのどちらか一つが試合前に使われていて、どちらが披露されるかはその時まで毎回分かりません。このカパ・オ・パンゴが導入された初めての試合は今でも覚えています。当時キャプテンだったタナ・ウマガ指揮の元、今まで見た事無いハカが披露され鳥肌が立ったのを覚えています。この新しいハカがこの試合で披露されるというのは、テレビ等を通して噂が流れていて、ニュージーランド中がわくわくしながら待っていました。
  • 様々な違ったハカが存在し、部族毎によって違ったハカを持っている。そしてラグビーで言うなら、チーム毎に別のハカがあります。例えば高校生のラグビーチームの試合前に、それぞれの学校の伝統のハカを互いに披露します。下のビデオは、オークランドにある2つの高校が試合前にハカを披露し対峙している物。

  • また、ハカには決まった振り付け・ダンスが存在します。やはり一番有名なのは、オールブラックスのカマテですが、このオールブラックスが演じるカマテの振り付けは、このオールブラックスの選手達だけの物で、他の人達がやる事は出来ません。ハカのカマテ自体は、他の人々・グループ(例えばオールブラックス以外のNZを代表するラグビーチーム、Bチーム等)によって演じられますが、その際には振り付け・ダンスはオールブラックスの物とは違います。
  • ハカが行われる際には、それを統率し指揮するリーダーが一人必ずいます。かつてはマオリの血を引く物しかオールブラックスではその役割を担う事が出来ませんでしたが、今ではマオリの血を引かない選手、2000年代中盤から後半にかけては当時キャプテンのタナ・ウマガ、彼はサモア系、そして白人(こちらでは西洋人の血を引く人達の事をマオリ語で、パケハ Pakeha)のリッチー・マッコウによって指揮されもしました。ですので、現在では人種を超えたニュージーランド人の誇りを示す物として捉えられています。
と、まあ、ハカについて書いて来ましたが、次回のイングランドでのラグビーのワールドカップまで1年を切りました。これから色々と熱の入った、本気モードの国際試合の数が増えて来るでしょう。今度オールブラックスの試合の際には、是非彼等のハカを見逃さずに。

それではまた次回。

2014年11月3日

ラグビー マオリ・オールブラックス対日本代表、第1戦を見て

2014年11月1日に日本の神戸でラグビーのマオリオールブラックス対日本代表の試合が行われつい先ほどインターネット上で録画されたものを再生して観戦しました。

試合の方は、61対21でマオリ・オールブラックスの勝ち。計8トライを献上しました。それでも日本も3トライ奪ってますね。2011年にニュージーランドで行われたワールドカップでは、オールブラックスと対戦し、確か83対7で負けてますので、それよりはダメージは少なかったと言えるでしょう。

これから、この試合及びマオリのチームに付いて幾つかの要点をお話ししたいと思います。

1. マオリオールブラックスとは?

マオリとはこちらの先住民族の名で、太平洋諸島系の民族。独自の言葉、マオリ語を持ち、西洋人が18世紀に来る前からこの地で暮らしています。で、このマオリ・オールブラックスに選ばれるには、先祖にマオリがいる事が証明されている事が必須条件。言わばNZ代表のBチーム的存在。確か去年くらいにも、マオリ・オールブラックスは来日して試合をしてるはず。今回Aチームのオールブラックスはアメリカ、そして英国に遠征中ですので、それと日程を併せてこの来日のツアーが企画されたのではないでしょうか。今回のこのマオリ・オールブラックスには、オールブラックスにまだ選ばれた事の無い、若手を集めた模様。若手選手の人材発掘と言った所でしょうか。

2. 日本代表の立ち位置

日本代表は、現在、世界ランキングで11位。これはそれほど日本の試合を見ていないので何とも言えないのですが、サッカーでもそうですがこの手のランキングの類いはあまり信憑性ありません。私の意見としては、このラグビーの世界ランキング、10位以降は入れ替わりが激しいものではないでしょうか。例えば、カナダは17位。確か2007年のワールドカップでは引き分けだった様な気が。また、アメリカは18位。前回2011年のワールドカップでは負けた覚えがあります。

ラグビーの世界では、強豪国、南半球の3カ国(NZ、オーストラリア、南アフリカ)プラスイングランドそしてフランスと言った所が現実的にワールドカップで優勝が狙える国々。そして2番手グループとして、ウェールズ、スコットランド、アイルランド、イタリア、アルゼンチンそして太平洋諸国(フィジー、トンガ、サモア)が続き、新興国として北米、日本等の国が続くといった感じではないでしょうか。

3. 試合寸評

前回オールブラックスとアメリカ代表の試合に関する記事でも書いた事なのですが、やはり日本も基礎の技術、パスの精度の差、ボールのハンドリング等でのミスが多く、自軍のミスからボールを奪われトライを決められてしまった事が数度ありました。どれだけ高度な戦術を採用し、実践しようとしてもこの様な簡単なミスで自滅してしまっては元も子もありません。

その戦術としては、闇雲にボールを蹴り出すのではなく、パスで繋いで攻めて行くという意図が感じられました。これはどちらかというと、南半球のオーストラリアやオールブラックスが伝統的に使うスタイルでそれににてるのではないかと感じました。一方、北半球のチームには、どんどん前方にボールを蹴り相手陣内に侵入して行く戦術を採るチームが多い様に感じます。

よく考えてみれば現在の日本のコーチ(ラグビー界では監督の事をコーチ、ヘッド・コーチと呼びます)はエディー・ジョーンズ、元ワラビーズ(オーストラリア代表)のヘッド・コーチでしたから、スタイルとして南半球的な要素が見受けられても不思議ではありません。

また、運動能力の個人差、こればかりは究極の所で埋めようが無いとは思いますが、この試合中、これを象徴するなシーンがありました。日本が相手陣内深く攻め込み、後少しでゴールラインだという所で、ボールがこぼれ奪われ、ニュージーランド選手の手に渡ります。日本は攻めに転じていたので急いでその選手を追いかけて走って行くのですが、ボールを持った選手にどんどん差を広げられます。そこで目にしたのは、そのボールを持った選手だけでなく、それをサポートに廻る他の二人の選手に、その追走していた日本の選手は抜かれてしまうんですね。いやあこれは屈辱でしょう、やってる側からしたら。自分も目を疑いました。それくらい個人の運動能力に差があるという事をまざまざと見せつけられた瞬間でした。

ただ悪い所ばかりではなく、スクラムでは、どういう訳か?圧倒していましたね。これには感動しました。

また、幾つものフェーズで継続的にパスを繋ごうとして攻撃を組み立てていました。フェーズとは、ボールを動かし始めてから的にボールを一度止められてしまうまでの時間帯の事で、相手との力の差があれば直にボールを奪われてしまうので攻撃にならず、フェーズ数は少なくなり、相手との力が拮抗していれば自ずとボール保持の時間も長くなりフェーズ数は増えます。例えばアメリカとオールブラックスの試合ではオールブラックスが圧倒していましたので、アメリカの立場からすれば、攻撃時にまるでフェーズの数としては少なかったのが見て取れます。

さて次回のワールドカップまで1年を切りました。また来週末にもう1試合、今度は東京で行われるそうなので、健闘を祈りましょう。

それではまた次回。

2014年11月2日

ラグビー オール・ブラックス(NZ代表)対イーグルス(アメリカ代表)

2014年11月2日の午前9時(ニュージーランド時間)にアメリカのシカゴで、ラグビーのテストマッチ(国際親善試合)が行われ、インターネット上のライブストリームでその試合を観戦しました。

結果は74-6で、オールブラックスの圧勝、計12トライをもぎ取りました。

こちらがその試合のハイライト。



このアメリカでの試合は、来週末からイギリスで行われる親善試合3試合、対イングランド、スコットランドそしてウェールズとの戦いを前に、アメリカに立ち寄ってアメリカ代表と試合をする、言わば今後の3試合に向けてのウォームアップみたいなもの。

更には、オールブラックスがアメリカの地で試合をするのは34年ぶりだとの事。6万2千の観客で、会場は満員でした。

オールブラックスは現在世界ラグビーのランキングで1位、一方のアメリカは18位。ちなみに日本代表は現在11位です。

こちらにそのIRB(International Rugby Board)のランキング表へのリンクを張っておきます。IRBはサッカーで言うFIFAみたいなもので、世界中のラグビーを統率している組織。

また、アメリカという国はラグビー後進国で、プロのリーグは無く、選手の殆どがアマチュアだそうです。

ですので、このオールブラックスがアメリカで試合をするという事の意味は、言わばラグビーというスポーツと、ラグビー界で世界最強のオールブラックスというブランドが、スポーツにおける、まだ未発展でこれからの需要に可能性のある、世界最大の市場のアメリカで、認識を深められるという経済的側面が強いものです。

試合の行われたシカゴのソルジャーフィールドというスタジアムは、本来NFL、アメリカンフットボールのシカゴベアーズのホームスタディアムだそうです。

さて、試合の方はオールブラックスが危なげなく、大差で圧勝。なんだかんだ言ってもかつて一度日本代表は147対幾つかで、歴史上最大の点差で負けた事がありますんで、それに比べたらまあこんなもんでしょう、実力の差から言って。

しかも後半も中盤にさしかかった頃から、オールブラックスは流してましたね。ですので彼等がもう少し本気になっていたら、更に点差は広まっていたのではないでしょうか。

試合のポイントとしましては、

  1. 基本技術の差
  2. チームとしての戦術の徹底の差
  3. 真剣な試合をこなす数の差
が、如実に現れた試合だったのでは無いでしょうか。

1. 基本技術の差


これはもう、どのスポーツでも言える事ですが、どれだけ若いうちにスポーツをプレーし始め、基本技術を若いうちに習得出来るかの差でしょう。アメリカ人のこの試合のコメンテーターの方も、ニュージーランド人はまだゆりかごにいる時からラグビーボールに触れているなんて表現していました。ニュージーランドではラグビーが国技になっており、至る所にチームがあり、小さい頃からこのスポーツに親しめる環境が整っています。人口450万程度の決して大きいとは言えないこの国が、世界で頂点に立っているというのは今更ながら驚きを隠せません。

2. チームとしての戦術の徹底の差

これも試合を見ていると解るのですが、オールブラックスの選手は、攻撃の際に必ずボールホルダーの周りに最低一人、大抵は更に、必ずサポートが付いています。ですのでボールを持った選手が止められた際に必ず幾つかの選択肢が常に存在しています。翻って、アメリカや、これは日本代表の試合等の試合でも共通するのですが、ボールを持った選手がタックルを受け止められた時に、周りのサポートが無く孤立して、ボールを奪われターンオーバーとなってしまう事が度々見受けられます。

また、この試合で一度印象的だったのが、オールブラックスのラインアウト時に、オールブラックスの選手達が前方と後方で2つのブロックを作り、選手がボールを受ける為にジャンプした際、それに吊られアメリカの選手達がディフェンスの為にこの2つのブろくに対応しようと二手に別れ対処しようとし、真ん中に大きなギャップを作ってしまい、そこを突かれて抜かれてしまい、最後にはトライを献上するシーンがありました。

こういう幾つもの戦術を持っていて、それを反復練習で選手達が完璧に学習しチームとして身につけ、戦況に応じて幾つものの選択肢の中から最前のものを選択し、実行する。こういう所に差が現れるものなのでしょう。

3. 真剣な試合をこなす数の差

ニュージーランドにはプロのラグビーチームが4つあり、冬の間には、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカそしてアルゼンチンからなるプロリーグに参加し毎週しのぎを削っています。それに比べると、アメリカの方は、これもコメンテーターの方が言っていたんですが、プロリーグも無く、選手の大半はアマチュアで、プレーする環境という面でそこには埋めようの無い差があると。アメリカの代表はこの試合の為に準備期間があり、集まって一緒に練習を行いましたが、次回は来年の6、7月まで一緒に集まる機会は無いとの事。

それに比べ、オールブラックスの選手の方は、冬の間半年に及ぶリーグ戦を戦い、シーズンオフの夏には、毎年行われる上記3カ国との対抗戦、そして北半球の強豪のイングランドやフランス等との親善試合が毎年の様に組まれ、真剣に試合をする場が多く設けられています。

如何に真剣な場での試合数をこなせるかという事は、非常に大きな意味を持っています。これは日本のサッカーの代表にも言える事なのではないでしょうか。アジアとヨーロッパ、南米との間には大きな開きがあり、地理的、カレンダー上での障害からなかなか格上のチームと真剣な試合をする機会が無く、それが日本のサッカーの進展を妨げているのと一緒ですね。

何はともあれ、この試合には多くのキウイ、ニュージーランド人が訪れ、画面を通しても、スタンドにはアメリカ人の数よりオールブラックスのサポーターの数の方が多いんじゃないかって感じでした。 カナダに住む私のキウイの友達達も大挙してシカゴに押し寄せた模様。この圧勝劇に浮かれすぎてシカゴで警察沙汰になって無い事を祈ります。

それではまた次回。